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物理学者の母による簡単な高校物理の解き方

運動量と運動量保存の法則について

🔷 運動量とは?

運動量とは、「物体の運動の勢い」を表す量のことで、質量と速度の積によって表されます。

速度や質量が大きければ大きいほど、運動量も大きくなり、運動の勢いは激しくなります。

静止している物体の運動量はゼロです。

 


🔹 公式

運動量 p\vec{p}は、質量 mm速度 v\vec{v}の積で表されます

p=mv\vec{p} = m \vec{v}

  • ベクトル量なので、向きがある。

  • 単位は kg·m/s(キログラム・メートル毎秒)

 

✅例題

2.0㎏の物体が3.0m/sで動いている時の運動量は

2.0×3.0=6.0kg·m/sとなります。

🔹運動量は大きいほど止めにくい

  • 同じ速さなら、重い物の方が運動量が大きい。

  • 同じ質量なら、速く動くほど運動量が大きい。

 

 


🔹運動量保存の法則

運動量保存の法則とは、外部から力が働かない(または合力が0)なら、全体の運動量は一定に保たれる性質のこと。
\text{衝突や分離の前後で運動量は変わらない!}

🔹 数式で表すと?

物体AとBが衝突するとき、

m1v1+m2v2=m1v1+m2v2m_1 v_1 + m_2 v_2 = m_1 v_1' + m_2 v_2'

  • 左辺:衝突前の全体の運動量

  • 右辺:衝突後の全体の運動量

 

🔹 なぜ保存されるの?

ニュートンの第3法則「作用・反作用の法則」によって、
2物体間の内力(お互いに及ぼす力)は打ち消し合います。

外部から力が加わらなければ、運動量の変化は相殺されるため、全体の運動量は変わらないのです。

 

🔸 衝突のタイプと運動量

衝突のタイプ 運動量保存 運動エネルギー保存 反発係数 ee
弾性衝突 1
非弾性衝突 × 0 < e < 1
完全非弾性衝突(くっつく) ×

0

 

🔷 弾性衝突とは?

運動量と運動エネルギーの両方が保存される衝突のこと。

つまり、ぶつかってもエネルギーの損失(熱・音・変形など)がない「理想的な衝突」です。


🔹 弾性衝突の特徴

特徴 意味
運動量保存 衝突の前後で全体の運動量が変わらない
運動エネルギー保存 衝突の前後で全体の運動エネルギーが変わらない
物体は変形せず反発する ぶつかった後、跳ね返る
反発係数 e=1e = 1 最大限に跳ね返る衝突

🔸 よく使う公式(1次元で2物体の場合)

1. 運動量保存の式:

m1v1+m2v2=m1v1+m2v2m_1 v_1 + m_2 v_2 = m_1 v_1' + m_2 v_2'

2. 運動エネルギー保存の式:

12m1v12+12m2v22=12m1v12+12m2v22\frac{1}{2} m_1 v_1^2 + \frac{1}{2} m_2 v_2^2 = \frac{1}{2} m_1 {v_1'}^2 + \frac{1}{2} m_2 {v_2'}^2

3. 速度の関係(重要な結論):

v1v2=(v1v2)v_1 - v_2 = -(v_1' - v_2')

これは衝突前後の相対速度の符号が反転することを意味します。


🔹 具体例

例:

  • 質量1kgの球Aが5m/sで右へ進み、

  • 質量1kgの球Bが静止しているときに、弾性衝突した。

結果:

Aは静止し、Bは5m/sで右に動く。

なぜ? → 全く同じ質量の物体が、完全に速度を交換して跳ね返るのが弾性衝突の特徴です(同質量・1次元限定)。


 

🔷 非弾性衝突とは?

運動量は保存されるが、運動エネルギーは一部失われる衝突のこと。

つまり、ぶつかった後に物体が変形したり、熱や音としてエネルギーが失われる「現実的な衝突」です。


🔹 非弾性衝突の特徴

項目 内容
✅ 運動量保存 はい(全体の運動量は保存される)
❌ 運動エネルギー保存 いいえ(エネルギーの一部が失われる)
🔁 反発係数 ee 0<e<10 < e < 1:完全弾性より跳ね返りが少ない
💥 結果 衝突後、物体は変形・熱・音などを発生させる

🔸 特殊な非弾性衝突:完全非弾性衝突

衝突後に物体がくっついて一体となって動く。

これは最もエネルギー損失が大きな非弾性衝突で、
反発係数 e=0e = 0 に対応します。


🔹 非弾性衝突の例

  • クルマの事故で車体がへこむ

  • 粘土玉同士がぶつかってくっつく

  • ボールが床に落ちてあまり跳ね返らない


🔸 数式での扱い

✅ 運動量保存(いつも使う)

m1v1+m2v2=m1v1+m2v2m_1 v_1 + m_2 v_2 = m_1 v_1' + m_2 v_2'

これは弾性でも非弾性でも常に使える


❌ 運動エネルギー保存(非弾性では使えない)

運動エネルギーは次のように一部失われる

衝突前の運動エネルギー>衝突後の運動エネルギー\text{衝突前の運動エネルギー} > \text{衝突後の運動エネルギー}


具体例:

質量1.0kgの小球Aが速さ4.0m/sで右に進んでいた。
静止していた質量2.0kgの小球Bに衝突し、くっついて一体となった。


結果:

衝突後、くっつく → 完全非弾性衝突
→ 運動量保存を使う:

1.0×4.0+2.0×0=(1.0+2.0)×v4.0=3.0×vv=4.03.0=1.33 m/s1.0 \times 4.0 + 2.0 \times 0 = (1.0 + 2.0) \times v' \Rightarrow 4.0 = 3.0 \times v' \Rightarrow v' = \frac{4.0}{3.0} = 1.33 \text{ m/s}

一体の速さは 1.33 m/s(右向き)


📌 非弾性衝突のエネルギー損失

この例で、衝突前後の運動エネルギーを比較すると…

  • 衝突前:

12×1.0×4.02=8.0J\frac{1}{2} \times 1.0 \times 4.0^2 = 8.0 \, \text{J}

  • 衝突後:

12×3.0×(1.33)22.67J\frac{1}{2} \times 3.0 \times (1.33)^2 ≈ 2.67 \, \text{J}

➡ 約 5.33J が熱・音・変形に使われた(失われた)ことが分かります。


✅ まとめ:弾性 vs 非弾性

特徴 弾性衝突 非弾性衝突
運動量保存 ✔ される ✔ される
運動エネルギー ✔ される ❌ 一部失われる
反発係数 ee 1 0 < e < 1(完全非弾性なら e = 0)
原子衝突、理想バネなど 車の事故、粘土玉の衝突など
 
 
いかがでしたか。
運動量保存の法則は、非常に重要な単元ですので、次回も例題を交えながらさらに詳しく解説していきたいと思います。
 

鉛直投げ上げの公式と例題

🔷 鉛直投げ上げとは?

 

鉛直投げ上げ(えんちょくなげあげ)とは、物体を真上に向かって投げる運動のことです。
重力の影響を受けながら、物体が上昇し、いずれ最高点に達し、そこから落ちてきます。

 

前回の鉛直投げ下ろしと違う点は、運動が上向き下向きの両方に働くという点です。

 

重力の影響を受けながら、物体が上昇し、いずれ最高点に達し、そこから落ちてきます。

 

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♦特徴的な3つのポイント

段階 状態
① 投げ上げる瞬間 上向きの初速度 v0v_0をもって運動が始まる
② 最高点 速度 v=0v = 0ここが運動の切り替えポイント
③ 落ちてくる途中 加速度 a=9.8m/s2a = 9.8\,\mathrm{m/s^2}で下向きに加速

上向きの運動と、下向きの運動が異なるのがこの運動の特徴です。

さらに最高点では速度が0になるという点も重要なポイントです。

 


🔷鉛直投げ上げの公式

鉛直投げ上げは、等加速度直線運動の一種で、以下の公式を使います。

  1. 速度と時間の関係

    v=v0gtv = v_0 - g t

    ※上向きを正とした場合。g=9.8m/s2g = 9.8\,\mathrm{m/s^2}

     
  2. 位置と時間の関係

    y=v0t12gt2y = v_0 t - \frac{1}{2} g t^2
  3. 最高点に達する時間

    tmax=v0gt_{\text{max}} = \frac{v_0}{g}

     


    🔷 例題

    では実際に、鉛直投げ下ろしの問題を解いてみましょう。

    鉛直投げ下ろしの時の基本問題と同様に、わかっている数値を公式に当てはめることで求められます。

    🟨 例題1(基本問題)

    ある物体を地面から**上向きに初速度 v0=20m/sv_0 = 20\,\mathrm{m/s}**で投げ上げたとします。
    重力加速度を g=9.8m/s2g = 9.8\,\mathrm{m/s^2}として、次の問いに答えなさい。

     


    (1) 物体が最高点に達するまでの時間を求めよ。

    (2) 最高点の高さを求めよ。

    (3) 投げ上げてから再び地面に戻ってくるまでの時間を求めよ。


    ✅ 解答・解説:

    (1) 最高点に達する時間 tmax

    使う式:

    最高点では速度 v=0v = 0

    これを変形させて

tmax=v0g


(2) 最高点の高さ ymaxy_{\text{max}}

使う式:


(3) 地面に戻るまでの時間(往復)

上りと下りは対称なので、最高点までの時間を2倍するだけ。

 

ttotal=2×tmax=2×2.04=4.08s

t_{\text{total}} = 2 \times t_{\text{max}} = 2 \times 2.04 = \boxed{4.08\,\mathrm{s}}


🟨 例題2 (応用問題)

地面から高さ h=30mh = 30\,\mathrm{m}の地点から、物体Aを初速度 v0=15m/sv_0 = 15\,\mathrm{m/s}で下向きに投げ下げた。

同時に、地上から物体Bを初速度 v1=10m/sv_1 = 10\,\mathrm{m/s}で上向きに投げた。

重力加速度は g=9.8m/s2g = 9.8\,\mathrm{m/s^2}とする。

(1)2つの物体が空中ですれ違うのは投げてから何秒後か?

(2) そのときの高さはどこか?

 


✅ 解答・解説:

✏️ 位置を時間の式で表す

Aの位置(上から投げる)

地上ではなく30mの高さから投げる場合、スタート時の位置30から現在の位置を引く。

yA(t)=3015t12gt2y_A(t) = 30 - 15t - \frac{1}{2}gt^2y_A(t) = 30 + 15t - \frac{1}{2}gt^2

Bの位置(地面から投げる)

yB(t)=10t12gt2y_B(t) = 10t - \frac{1}{2}gt^2


(1) すれ違う時:位置が一致する

yA(t)=yB(t)y_A(t) = y_B(t)
3015t12gt2=10t12gt23015t=10t
25t=30t=1.2s30 - 15t - \frac{1}{2}gt^2 = 10t - \frac{1}{2}gt^2 \Rightarrow 30 - 15t = 10t \Rightarrow 25t = 30 \Rightarrow t = \boxed{1.2\,\mathrm{s}}30 + 15t - \frac{1}{2}gt^2 = 10t - \frac{1}{2}gt^2 \Rightarrow 30 + 15t = 10t \Rightarrow 5t = -30

(2) そのときの高さ:

Bの位置に代入:

y=10t12gt2=10×1.24.9×(1.2)2=127.056=4.944my = 10t - \frac{1}{2}gt^2 = 10 \times 1.2 - 4.9 \times (1.2)^2 = 12 - 7.056 = \boxed{4.944\,\mathrm{m}}


✅ 答え

(1) すれ違うのは 1.2 秒後
(2) その高さは 約 4.9 m

 

いかがでしたか。

鉛直投げ上げは一見難しそうに見えますが、鉛直投げ下ろしと同じように公式さえ覚えてしまえば簡単です。

 

鉛直投げ上げは、斜方投射や水平投射を解く際に必要となってくるので、ここで必ずマスターしておいてくださいね。

 

では今回はここまで。

本日も勉強お疲れ様でした。

 

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鉛直投げ下ろしの公式と例題、自由落下との違い

🔷 鉛直投げ下ろしとは?

 

鉛直投げ下ろしとは、物体を真下に向かって初速度を与えて投げる運動のことです。

 

え?前回の自由落下も真下に落とす運動だったよね?

と思ったそこのあなた。大正解です。

 

実は自由落下運動と鉛直投げ下ろしは非常に近い運動なんです。

ただし、似て非なるもの!

混同してしまうと大変なので、今回は自由落下運動との違いも簡単にまとめておきますね。

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🔷 自由落下との違い

  • 自由落下は「初速度 v0=0v_0 = 0」ですが、

  • 鉛直投げ下ろしは「初速度 v0>0v_0 > 0」で下向きに投げます。

✅ どちらも**重力加速度(9.8 m/s²)**で加速されるという点では同じです。

項目 自由落下 鉛直投げ下ろし
初速度 0 m/s 0より大きい(下向き)
公式 y=12gt2 y = \frac{1}{2} g t^2
y=v0t+12gt2y = v_0 t + \frac{1}{2} g t^2
到達時間 長い 短くなる(加速が早い)
到達速度 遅い 速い(最初から速い)

 


🔷 使う座標と符号のルール(下を正とする場合)

  • 初速度 v0v_0:正の値(下向き)

  • 加速度 a=ga = g:9.8 m/s²

  • 変位 yy:落下距離(下方向に増える)

 


🔷 基本の公式

  1. 速度

    v=v0+gtv = v_0 + g t
  2. 落下距離

    y=v0t+12gt2y = v_0 t + \frac{1}{2} g t^2
  3. 速度と距離の関係

    v2=v02+2gy

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🔷 例題

では実際に、鉛直投げ下ろしの問題を解いてみましょう。

自由落下の時の基本問題と同様に、わかっている数値を公式に当てはめることで求められます。

🟨 例題1(基本問題)

高さ40mのビルの上から、初速度 5 m/s で鉛直下向きにボールを投げた。

  1. 地面に到達するまでの時間は?

  2. 到達時の速さは?


① 時間

使う式:

y=v0t+12gt2y = v_0 t + \frac{1}{2} g t^2

代入:

40=5t+129.8t240=5t+4.9t240 = 5 t + \frac{1}{2} \cdot 9.8 \cdot t^2 \Rightarrow 40 = 5 t + 4.9 t^2

整理:

4.9t2+5t40=04.9 t^2 + 5 t - 40 = 0

この2次方程式を解きます:

t=5±52+44.94024.9=5±25+7849.8=5±8099.8t = \frac{-5 \pm \sqrt{5^2 + 4 \cdot 4.9 \cdot 40}}{2 \cdot 4.9} \\ = \frac{-5 \pm \sqrt{25 + 784}}{9.8} = \frac{-5 \pm \sqrt{809}}{9.8} 80928.45t=5+28.459.823.459.82.39

 

 


② 到達時の速度

v=v0+gt=5+9.82.395+23.4=28.4m/s

 

 


✅ 答え

  • 地面に着くまでの時間:約 2.4秒

  • 到達時の速さ:約 28m/s

 


🟨 例題2 (応用問題)

高さ100mの崖の上から、ある物体を初速度10 m/s真下に向かって投げ下ろした

  1. 地面に到達するまでの時間を求めよ。

  2. 到達時の速度を求めよ。

  3. 落下後、投げてから1.5秒後の位置(地面からの高さ)を求めよ。

※ 重力加速度 g=9.8m/s2g = 9.8 \, \mathrm{m/s^2}

 


🔷 解答・解説

① 地面に到達するまでの時間 tt

使う公式:

y=v0t+12gt2y = v_0 t + \frac{1}{2} g t^2

ここで、

  • y=100y = 100(落下距離)

  • v0=10v_0 = 10

  • g=9.8g = 9.8

代入すると:

100=10t+129.8t2100=10t+4.9t24.9t2+10t100=0

 

これは二次方程式なので解きます:

t=10±102+44.910024.9=10±100+19609.8=10±20609.8t = \frac{-10 \pm \sqrt{10^2 + 4 \cdot 4.9 \cdot 100}}{2 \cdot 4.9} \\ = \frac{-10 \pm \sqrt{100 + 1960}}{9.8} = \frac{-10 \pm \sqrt{2060}}{9.8} 206045.4t=10+45.49.835.49.83.61\sqrt{2060} \approx 45.4 \Rightarrow t = \frac{-10 + 45.4}{9.8} \approx \frac{35.4}{9.8} \approx 3.61 \, \text{秒}

 

 

 


② 到達時の速度 vv

使う式:

v=v0+gt=10+9.83.6110+35.38=45.38m/s

 


③ 投げてから1.5秒後の位置(地面からの高さ)

まず、その時点での落下距離を計算:

y=v0t+12gt2=101.5+4.9(1.5)2=15+4.92.25=15+11.025=26.025my = v_0 t + \frac{1}{2} g t^2 = 10 \cdot 1.5 + 4.9 \cdot (1.5)^2 \\ = 15 + 4.9 \cdot 2.25 = 15 + 11.025 = 26.025 \, \mathrm{m}

高さ = 100 − 26.025 = 73.975 m


✅ 答えまとめ

問い 答え
地面に到達するまでの時間 3.6秒
到達時の速度 45m/s
投げてから1.5秒後の高さ 74m(地面から)

 

 

いかがでしたか。

鉛直投げ下ろしは自由落下運動とよく似ていますが、初速度が加わっている分、少し計算が複雑になります。

でも、うまく公式に当てはめればすぐに解ける問題なので、焦らず落ち着いて解いてみてくださいね。

 

では今回はここまで。

本日も勉強お疲れ様でした。

 

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自由落下運動の公式と例題

◆ 自由落下運動とは?

自由落下運動は、物体が重力のみの影響を受けて落下する運動のことを指します。

空気抵抗を無視すると、すべての物体は同じ加速度で落下します。

 

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🔷 基本的な特徴

  • 加速度:地球上では、自由落下する物体の加速度は一定で、約9.8 m/s²(重力加速度 gg)です。

  • 初速度:自由落下運動では、初速度 v0=0v_0 = 0 です(手を離した瞬間に速度がゼロと考える)。

  • 空気抵抗:理論的には無視されます(真空中を想定)。

主な物理量と記号

自由落下運動で使われる記号には以下のものがあります。

物理量 記号 単位
位置 xx
[m](メートル)
初速度 v0v_0 [m/s]
速度 vv
[m/s]
加速度 aa
[m/s²]
時間 tt
[s](秒)

 


🔷 主な公式

  1. 速度(時間 tt が経過したときの速度)

    v=gt
  2. 落下距離(時間 tt のときに落ちた距離)

    y=12gt2y = \frac{1}{2} g t^2
  3. 速度と距離の関係(時間を使わない)

    v2=2gyv^2 = 2 g y

🔷 自由落下の具体的な例

これだけではなかなかピンとこない人も多いかもしれません。

そこで、日常で起こりうる自由落下の具体的な例をいくつか紹介しますね。

① 高いビルから鍵を落とした場合

  • 鍵をポケットから取り出した瞬間に手をすべらせて落としてしまったとします。

  • このとき、鍵は重力以外の力を受けていないので「自由落下」になります。

  • 地面までの時間や到達速度は上で紹介した公式で計算できます。


② 真空装置の中での落下実験

  • 空気抵抗を完全になくした真空装置の中で、羽根と鉄球を同時に落とすと、同じ加速度で落ちて同時に着地します。

  • これはNASAなどの映像で有名です(アポロ15号でも月面での実験あり)。


③ エレベーターのワイヤーが切れた場合(理論上の話)

  • 安全装置がなかったとして、エレベーターが支えを失い落下すると、自由落下状態になります。

  • ただし実際には安全装置があるので完全な自由落下にはなりません。


④ 崖の上から石を静かに手放す

  • 手から力を加えずに「ポン」と落としたとき。

  • この石は初速度 0 の自由落下運動になります。


⑤ 遊園地のフリーフォール(理想化した場合)

  • 垂直に落ちる遊具で、機械が手を放すと一瞬「自由落下状態」に近くなります。

  • 実際は制御が入るため完全な自由落下ではありませんが、加速度感覚はそれに近いです。

※現実には空気抵抗があるため、本当の意味での自由落下は真空中か、それに近い条件でしか起こりません。ただし、物理の学習では空気抵抗を無視して考えるのが基本です。

 

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🔷 自由落下の例題

では、実際に例題を一緒に説いてみましょう。

基本的にわかっている数値を自由落下の公式に当てはめるだけで解ける問題がほとんどです。

🟨 例題1(基本問題)

高さ45mのビルの屋上から物体を手を離して自由落下させたとき:

  1. 地面に着くまでの時間は何秒か?

  2. 地面に着く直前の速さは何m/sか?

※重力加速度 g=9.8m/s2g = 9.8 \, \mathrm{m/s^2}

 


🔷 解答

① 落下時間 tt

使う式:

 

y=12gt2

代入して解く:

45=129.8t2t2=909.89.18t9.183.0345 = \frac{1}{2} \cdot 9.8 \cdot t^2 \\ t^2 = \frac{90}{9.8} \approx 9.18 \\ t \approx \sqrt{9.18} \approx 3.03 \, \text{秒}45 = \frac{1}{2} \cdot 9.8 \cdot t^2 \\ t^2 = \frac{90}{9.8} \approx 9.18 \\ t \approx \sqrt{9.18} \approx 3.03 \, \text{秒}


② 到達時の速度 vv

使う式:

v=gt

 

代入:

v=9.83.0329.7m/sv = 9.8 \cdot 3.03 \approx 29.7 \, \mathrm{m/s}v = 9.8 \cdot 3.03 \approx 29.7 \, \mathrm{m/s}


✅ 答え

  • 時間:約 3.0 秒

  • 速度:約 30m/s

 


では、もう少し難易度の高い例題も解いてみましょう。

🟨 例題2(応用問題)

ある物体を高さ80mの崖の上から自由落下させた。

  1. 地面に衝突する1秒前の高さは何mか?

  2. 地面に衝突する2秒前の速度は何m/sか?

※重力加速度 g=9.8m/s2g = 9.8 \, \mathrm{m/s^2}


🔷 解答

この問題はわかっている数値を公式に当てはめるだけでは解くことができません。

まずは全体の落下時間を求めてから、それぞれの問題に取り組みます。

y=12gt280=129.8t2t2=1609.816.33t4.04y = \frac{1}{2} g t^2 \Rightarrow 80 = \frac{1}{2} \cdot 9.8 \cdot t^2 \Rightarrow t^2 = \frac{160}{9.8} \approx 16.33 \Rightarrow t \approx 4.04 \, \text{秒}


① 衝突1秒前の高さ(つまり落下から 3.04秒時点の高さ)

y=12gt2=129.8(3.04)24.99.2445.3my = \frac{1}{2} g t^2 = \frac{1}{2} \cdot 9.8 \cdot (3.04)^2 \approx 4.9 \cdot 9.24 \approx 45.3 \, \text{m}

答え:45.3m


② 衝突2秒前の速度(つまり落下から 2.04秒時点の速度)

v=gt=9.82.0419.99m/sv = g t = 9.8 \cdot 2.04 \approx 19.99 \, \text{m/s}

答え:20.0 m/s


✅ まとめ

問題 答え
衝突1秒前の高さ 約 45m
衝突2秒前の速度 約 20m/s

 

 

いかがでしたか。

自由落下運動の問題は、比較的簡単に解けるかと思います。

自由落下の公式は、斜方投射水平投射など、他の運動の際にも必要となってきますので、しっかりとマスターしておいてくださいね。

 

では今回はここまで。

本日も勉強お疲れ様でした。

 

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等加速度直線運動の特徴と公式

◆ 等加速度直線運動とは?

等加速度直線運動(とうかそくどちょくせんうんどう)は、加速度が一定で、一直線上を運動する運動のことです。高校物理や大学初級レベルの物理で基本となる運動の一つです

 

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♦基本的な定義

  • 等加速度:運動中、速度の変化率(加速度)が常に一定。

  • 直線運動:物体が一直線上を移動する運動。

  • したがって、「等加速度直線運動」とは、「加速度が一定な直線運動」です


主な物理量と記号

等加速度直線運動で使われる記号には以下のものがあります。

 

物理量 記号 単位
位置 xx
[m](メートル)
初速度 v0v_0 [m/s]
速度 vv
[m/s]
加速度 aa
[m/s²]
時間 tt
[s](秒)
 

♦基本の運動方程式(3つ)

等加速度直線運動では、以下の3つの公式がよく使われます。

  1. 速度と時間の関係式

    v=v0+atv = v_0 + at
  2. 位置と時間の関係式

    x=x0+v0t+12at2x = x_0 + v_0 t + \frac{1}{2} a t^2
  3. 速度と位置の関係式(時間を使わない)

    v2=v02+2a(xx0)

♦グラフでの理解

等加速度直線運動では、主に速度‐時間グラフ位置‐時間グラフ加速度‐時間グラフが用いられます。

実際に加速度 a=2m/s2a = 2 \, \mathrm{m/s^2}、初速度 v0=0m/sv_0 = 0 \, \mathrm{m/s}、初期位置 x0=0mx_0 = 0 \, \mathrm{m}の運動を例にとったグラフを見てみましょう。

 

1. 速度-時間グラフ(v-tグラフ)

  • 傾きが加速度(a)に相当する直線。

  • 面積は移動距離(位置の変化量)を表す。

 

2. 位置-時間グラフ(x-tグラフ)

  • 放物線(2次関数の形)になります。

  • 初速度が0のときは、原点から上に開く放物線。


3.加速度 - 時間グラフ(a-tグラフ)

 ・加速度は一定なので、水平な直線。

 

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✅ 等加速度直線運動の具体例

等加速度直線運動には具体的に以下のような運動タイプがあります。

1. 自由落下運動

  • 内容:物体が空気抵抗なしで地面に向かって落ちる運動

  • 加速度:鉛直下向きに一定(地球上では g9.8m/s2g \approx 9.8 \, \mathrm{m/s^2}

  • 初速度:ゼロ(手を離しただけ)

  • :ビルの上からボールを手を離して落とす


2. 投げ下ろし運動

  • 内容:物体を下向きに初速度をつけて投げる

  • 加速度:鉛直下向きに一定(gg

  • 初速度:ゼロではない

  • :高い所からボールを下に向かって投げる


3. 鉛直投げ上げ運動

  • 内容:物体を上向きに初速度を持って投げる運動

  • 加速度:上に投げても、加速度は下向き(-g)

  • 運動の流れ

    • 上昇:速度が減少 → 最高点で速度0

    • 下降:自由落下と同じ運動に移行

  • :ボールを真上に投げて落ちてくるまで


4. 水平投射運動

  • 内容:水平方向に初速度を持って投げ出し、垂直方向には自由落下

  • 加速度:水平方向は等速度(加速度0)、垂直方向は gg

  • 注意:これは厳密には「直線運動ではない」ですが、垂直方向は等加速度直線運動と見なせます

  • :机の端からペンを横に滑らせて落とす


🚀 その他の例

5. 等加速度で加速する車

  • 内容:信号が青になってアクセルを一定に踏んで進む車

  • 加速度:正(速度が増える)


6. ブレーキをかけて止まる車(減速運動)

  • 内容:一定の強さでブレーキをかけて止まる

  • 加速度:負(速度が減る)


🔁 まとめ表

運動タイプ 初速度 加速度の向き 代表的な例
自由落下 0 下向き(+g) 手を離したボール
投げ下ろし 下向き 下向き(+g) 下向きに投げるボール
鉛直投げ上げ 上向き 下向き(-g) 真上に投げたボール
水平投射(垂直方向) 横向き 下向き(+g) 机から転がったペンの落下部分
車の加速 0〜小 前向き(+a) アクセルで加速する車
車の減速 高速 後向き(-a) ブレーキで止まる車
 
これらの運動の詳しい解説については別のページで解説していきます。
 

等加速度直線運動のまとめ

  • 等加速度直線運動では、加速度が一定であることがすべての計算の出発点です。

  • 時間を軸にしたグラフで理解すると直感的にわかりやすいです。

  • 初速度が0かどうか、向き(正負)などに注意して式を使い分けることが大事です。


※等速直線運動との違い

よく等速直線運動と等加速度直線運動を混同してしまうことがあります。

等速直線運動と等加速度直線運動は、どちらも一直線上を運動するという点では共通していますが、速度や加速度の性質が異なります。以下に、違いをわかりやすくまとめます。

 

🔁【ざっくり比較表】

特徴 等速直線運動 等加速度直線運動
速度(v) 一定 時間とともに変化する
加速度(a) 0 一定(0でない)
位置の式 x=x0+vtx = x_0 + vt
x=x0+v0t+12at2x = x_0 + v_0 t + \frac{1}{2}at^2
速度の式 —(変化なし) v=v0+atv = v_0 + at
グラフ(x-t) 直線(傾き=速度) 放物線(2次関数)
代表的な例 一定速度で走る電車、自動車など 自由落下、加速する車、ブレーキをかける車など
加速度の意味 変化がない ⇒ 加速度0 速度が変化 ⇒ 加速度は一定(0でない)

📘それぞれの運動の特徴

✅ 等速直線運動

  • 定義速度が一定で、直線上を動く運動。

  • 加速度は 0

  • ずっと同じ速さ・同じ向きで進み続ける。

  • 位置の変化は時間に比例する(グラフは直線)。

x = x_0 + vt

✅ 等加速度直線運動

  • 定義加速度が一定で、直線上を動く運動。

  • 時間が経つごとに速度が変化する。

  • 速度の変化が毎秒同じ量だけ変わる(=加速度が一定)。

  • 位置の変化は時間の2乗に比例(グラフは放物線)。

x = x_0 + v_0t + \frac{1}{2}at^2


 いかがでしたか。

等加速度直線運動というと、なんだか難しく聞こえてしまいますが、公式さえ覚えてしまえば特に難しいことはありませんので、落ち着いて考えてみてくださいね。

 

では今回はここまで。

本日も勉強お疲れ様でした。

 

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等速直線運動とは? 解説から例題まで

◆ 等速直線運動とは?

等速直線運動とは、速さが一定で、かつまっすぐな直線上を運動している状態のことを言います。

簡単に言うと…

  • 進む方向が変わらない(=直線)

  • 速さが変わらない(=等速)

 

想像してみてください。

無重力の宇宙空間でボールを投げると…

そのまま同じ速度でずっと飛び続けますよね。

それが等速直線運動です。

 

無重力かつ空気抵抗などの外力が一切働かない環境では、ボールが投げられたあとも速度を変える原因がないため、そのまま等速直線運動を続けます。

 


🔹なぜそうなるか?

これは**ニュートンの第一法則(慣性の法則)**によって説明されます:

「外力が加わらない限り、物体は静止し続けるか、等速直線運動を続ける。」

つまり、無重力空間で投げたボールには、

  • 重力がない(重力による加速度がない)

  • 空気抵抗もない(減速しない)

ので、ボールは最初に与えられた速度と向きをずっと保ち続けるわけです。

 


◆ 特徴

  1. 速度が一定
     → 速度の大きさ(速さ)も向き(方向)も変わらない。

  2. 加速度は0
     → 加速も減速もしていない。

  3. 移動距離は時間に比例する
     → 式で表すと: x=vt

  - x:移動距離(または変位)
  - v:速さ(速度)
  - t:時間

 

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では実際に問題を解いてみましょう。

まずは基本的な例題から。

 


🔹【例題】

ある物体が等速直線運動をしています。
速さは 3.0 m/s です。この物体は10秒後にどれだけ進んでいるでしょうか?

 


 

🔹【解き方】

等速直線運動では、以下の式が使えます:

x=vt

  • x:移動距離(m)

  • v:速さ(m/s)

  • t:時間(s)


代入して計算:

x=3.0 m/s×10 s=30 mx = 3.0\ \text{m/s} \times 10\ \text{s} = 30\ \text{m}

 


✅【答え】

30メートル

 

続いて、応用問題も見ていきましょう。

 


🔹【応用例題1:負の方向の運動】

◆ 問題

ある物体が速さ2.0 m/sで左向き(負の向き)に等速直線運動しています。出発点を0 mとしたとき、5秒後の位置はどこになりますか?

 


◆ 解き方

負の向きなので、速度は -2.0 m/s として計算します。

x=v×t=(2.0) m/s×5 s=10 mx = v × t = (-2.0)\ \text{m/s} × 5\ \text{s} = -10\ \text{m}


✅【答え】

−10 m(出発点から左方向に10 mの位置)

 


🔹【応用例題2:距離–時間グラフの読み取り】

◆ 問題

次のグラフは、ある物体の距離と時間の関係を表したものです。物体の速さを求めなさい。

※x軸は時間(秒)、y軸は距離(m)です。

 


◆ 解き方

等速直線運動の距離–時間グラフは直線になります。

グラフから速さを求めるには:

v=距離の変化時間の変化=20050=4.0 m/sv = \frac{距離の変化}{時間の変化} = \frac{20 - 0}{5 - 0} = 4.0\ \text{m/s}


✅【答え】

4.0 m/s

 


🔹【応用例題3:2物体の出会い】

◆ 問題

AさんとBさんが20 m離れた地点から向かい合って歩き始めました。Aさんは1.5 m/s、Bさんは2.5 m/sで進みます。2人は何秒後に出会うでしょうか?

 


◆ 解き方

2人の距離が縮む速さ(相対速度)は:

1.5+2.5=4.0 m/s1.5 + 2.5 = 4.0\ \text{m/s}

距離20 mをその速さで縮めるので:

t=204.0=5 秒t = \frac{20}{4.0} = 5\ \text{秒}

 


✅【答え】

5.0秒後に出会う

 


 

いかがでしたか。

等速直線運動と聞くと、ついつい身構えてしまいがちですが、実際の計算は算数で習う速さ問題と同じです。

 

難しいことは一切ありませんので、落ち着いて考えてみてくださいね。

 

では今回はここまで。

本日も勉強お疲れ様でした。

 

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